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USB デバイスの充電について

Written by Product Owners

Last published at: April 16th, 2024


この記事では、USB デバイスの正しい充電方法と注意点について説明しています。

概要

オリジナルの USB 2.0 技術仕様では、USB ポートから USB デバイスへ供給される電流は 0.5A に制限されています(電圧は常に 5V です)。この電流は小さな電池を充電するには充分なものの、容量の大きな電池には不十分で、より大きな電力が必要でした。USB 3.0 の技術規格ではこれが 0.9A に拡張されましたが、それでも最近のデバイスを充電するには不十分か、充電レートが遅すぎて時間がかかります。USB による充電が普及するにつれ、USB 機器メーカーはこのような電力制限を超えて、より多くの電力を利用するための斬新な方法を考え出しました。通常は、データ用の信号ラインを使用して、より高いレートで電流を引き出すよう指示を出す、という方法が使われました。

しかし残念なことに、数年前までは広く採用された「標準規格」が存在せず、USB ポートによる充電には様々なバリエーション(様々なメーカーによる独自規格)が存在していました。一般ユーザーにとってさらにストレスのもとになったのは、これらの信号に関する公的な情報や文書が見つけられなかったことでした。


デバイス充電に関する注意

デバイスと充電器の間で充電が行われるか、また、それがどのようなレートで行われるかは、実は充電器ではなく接続されたデバイス次第です。ある(充電される側の)デバイスは、充電器側から送られた充電信号をガイドラインとして使用しレートを決定することも、単にその充電器から可能な限り高い電力を引き出して充電しようとすることもあります。一部の「スマートでない」デバイスは、その充電の仕組みによっては標準 USB ポートに負荷をかけ、一時的に USB ポートが機能しなくなる(再度使用したければポートのリセットが必要になる)こともあれば、まれにですが永久的な損傷を引き起こすこともあり得ます。

重要なのは、充電器側がデバイスに対して電力を「送る」のではなく、デバイスが必要に応じて充電器から電力を「引き出す」のだという点です。たとえば、500mA の電流を必要とする USB デバイスの場合、たとえそれを 2.4A(2400mA)に対応した USB 充電器またはポートに接続したとしても、(過電流などによって)デバイスが損傷するようなことはありません。デバイス側が、必要な電流を「引き出す」だけだからです。


USB 充電の標準規格

一部の USB デバイスは、USB-IF が策定した充電規格の「BC(Battery Charing)1.1/1.2」に対応していますが、多くの場合はそれは仕様書などには記載されていません。そのデバイスがどんな充電規格や標準規格に対応しているのかは、試してみないとわからないことが多いのです。

BC 1.2 充電規格は、下記の 3 つの充電ポートタイプを規定しています。 

  • 標準ダウンストリーム・ポート(SDP) - このポートは本来の USB ポートの役割であるデータ転送用で、充電用の特別な機能は持っていません。接続されたデバイスに対しては、USB ポートの標準である 0.5A/5V までの電力を供給します。
  • 充電ダウンストリーム・ポート(CDP) - このポートはデータ転送だけでなく、接続されたデバイスに対して標準の 3 倍、最大 1.5A までの電力を供給できます。充電対応のデバイスが接続されたことを検知して充電レートを決定し、そのあとでデータモードに切り替わります。
  • 専用充電ポート(DCP) - このポートは充電専用で、データ転送は行いません。最大 1.5A までの電力を接続されたデバイスに対して供給します。この場合、データ用の信号線(D+ と D-)は短絡され、つまり使用できなくなります。一般に、このポートが PC システムに搭載されることはありません。


メーカー独自の充電方法

多くのデバイス・メーカーは独自の DCP 信号を規定して採用し、より高い充電レートで充電できるようにしたり「メーカー認定の」充電器からのみ充電できるようにしています。例えば iPad は Apple 社の Mac システムや 充電器を使用すると最大で 2.4A で充電が可能ですが、標準的な USB ポートに接続すると全く充電することができません。 以下に代表的なものを説明します。

Apple

Apple 社は、自社の消費電力の多いモバイル機器のために、独自の充電規格を作った最初のメーカーの一つです。下記のような充電方法を採用した機器を販売しています。

  • Apple 2.4A: 2.7V D+, 2.7V D-
  • Apple 2.1A: 2V D+, 2.7V D-
  • Apple 1A: 2.7V D+, 2V D-
  • Apple 500mA: 2V D+, 2V D-
信号 D+ 電圧 D- 電圧
Apple 2.4A 2.7V 2.7V
Apple 2.1A 2V 2.7V
Apple 1A 2.7V 2V
Apple 500mA 2V 2V

Samsung

Samsung 社製モバイルデバイスの多くは、BC 1.2 標準充電規格の DCP、CDP、SDP モードに対応しています。ただし、比較的古いデバイスでは独自の Samsung DCP 信号(1.2V D+, 1.2V D-)を採用していることもあります。

Qualcomm Quick Charge (QC) 1/2/3

Qualcomm 社の独自規格である QC 充電は、標準の USB 充電規格よりはるかに高い電力を出力することができます。これらの信号は Qualcomm 社製 Snapdragon SoC チップセットを搭載したモバイル機器で動作するように、特別に設計されたものです(逆に言えば、Snapdragon チップを非搭載のモデルでは使用できません。)この充電規格は、一部のモバイル機器メーカーがマーケティング目的で自社ブランド名を付けて宣伝していることもありますが、実際に使われているのは QC 技術です。 下記にその代表的な例を挙げます。

Plugable 社は QC 対応のデバイスを販売していません。 

  • Samsung 社 AFC(Adaptive Fast Charging:アダプティブ高速充電)
  • Oppo 社 SuperVOOC
  • OnePlus WarpCharge(注:QC 技術によるものと、それを拡張して OnePlus 社独自の規格による 65W までの充電方式を採用したものがある)
  • Huawei 社 SuperCharge

QC 充電規格では、充電器側からデータラインに送られる信号に基づき、様々な電圧で電力が出力されます

出力電圧 (Vcc) D+ 電圧 D- 電圧
5V 0.6V GND
9V 3.3V
0.6V
12V 0.6V
0.6V
20V 3.3V 3.3V


「スマート」充電

「スマート充電」対応機器には充電用コントローラチップが搭載されており、接続された充電対象のデバイスにとって最適な信号を検出しようとします。信号が検出されると交渉が終了し、デバイスへの充電が開始されます。