新しいアドレス指定技術 IPv6
私たちが現在使用しているインターネットは、もともと 40 年以上前に決められた「アドレス指定技術(IPv4)」を利用して運営されています。すでに 10 年以上前から、このアドレスが不足することははっきりしていました。インターネットに接続されるデバイス数が増え続ける中、既にオンライン接続された機器だけでなく、今後接続されるデバイスにも対応できるよう将来に備える必要があります。
IPv6(Internet Protocol version 6)は、世界で使われるネットワークへ直接アクセスするための「インターネット・プロトコル」の 6 番目のバージョンです。この記事では、旧来から使用されてきた現行の IPv4 と IPv6 の背景を説明し、IPv6 を利用するために Plugable 製品がどのように役立つかについて説明します。
Plugable 社製品はIPv6 をサポートしています。弊社内で実施されている検証手順については別記事「How to Test An IPv6 connection」を参照してください。企業等におけるネットワーク管理者、技術サポートチームなどネットワークのプロの方だけでなく、インターネットの未来に興味をお持ちのユーザーの方々にも役に立つ情報です。関連する Plugable 製品の一覧は、この記事後方のリストを参照してください。
IPv4 と IPv6 の違い
インターネット・プロトコルは、インターネットに接続するために必要なネットワーク上で完全にユニークな ID を必要とします。この ID は「パブリック(またはグローバル)IP アドレス」と呼ばれ、これによりデバイスは自動的に数値化され、電気的に接続交渉を行い、実際の使用権を手にすることができます。現行の IPv4 の問題は、このアドレスが枯渇しつつあることです。
IPv4 は 32 ビットのアドレスを使用しており、グローバルアドレスの使用可能数は最大約 43 億(2の 32 乗)個までです。IPv4 のアドレスは、『カンマで区切られた 4 つの 8 ビット数が、それぞれ 10 進数で表記』されます。例えば「192.168.1.1」というアドレスがありますが、これは一般的には家庭内のルーターに使用されます。この例のように、いくつかのアドレスは既定の機能を持っている(予約されている)ことがあり、結果として通常のデバイスには使用できないアドレス(範囲)もあります。それぞれの桁は 8 ビットですので、使用できる値は 10 進数の 0 ~ 255 までです。
私たちが IT 機器として利用しているスマートフォン、タブレット、PC だけでなく、ネット接続するゲーム機、スピーカー、テレビ、セキュリティシステム、自動車などそれぞれが、インターネットに接続するための個別アドレスを持つ必要があります。IPv4 の上限値 43 億個は、現時点ではもちろん、将来的に必要な数には到底不足しています。
そこで、新しい IPv6 が登場しました。インターネット技術の標準化を推進する非営利団体である「インターネット技術タスクフォース(IETF)」は、IPv4 に変わる標準通信プロトコルとして IPv6 を開発しました。
IPv6 のアドレスでは、『コロンで区切られた 8 つの 16 ビット数が、それぞれ 16 進数で表記』されます。例えば「2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334」のようなものです。この時実際には『先頭の 0』または『0000』は取り除かれて「2001:db8:85a3::8a2e:370:7334」のように表記されます。使用可能なアドレス数は 8x16=128 ビットで表現できる数となり、約 340 澗(2 の 128 乗、3.4x10 の 38 乗)です。
このように、IPv4 に比べはるかに広大なアドレス空間と強化された機能により、IPv6 は成長し続けるインターネット環境に対応することが可能です。しかし、まだ我々は IPv6 へ完全に移行できていません。
IPv6 と IoT 対応スマートデバイスとの関係
IETF によって IPv6 のドラフト仕様が決定したのは 1995 年で、1998 年には主な使用が確定し、UNIX系 OS では 2006 年頃までに主要部分の実装が完了しています。その後も様々な RFC(変更リクエスト文書)が提供され続け、Windows、macOS、iOS、Android 環境等での実装が進む中、2017 年には再編され統合された技術仕様が IETF によりインターネット標準として批准されました。
IPv4 の制限に対する解決策として、IPv6 は不可欠なものと言えます。しかし IPv6 はその誕生以後、いくつかの長い道のりを経て今なお、まだ完全に普及したとは言えません。
IoT(Internet of Things)、つまり「家電製品・車・建物など、さまざまな『モノ』をインターネットと繋ぐ技術」によってネット接続されるデバイス産業は、IPv6 の普及によって最も大きな利益を得られる分野です。近年 IoT 機器はその機能向上と販売成長率を加速させています。マーケティング関連データを提供する Statista 社によると、世界中でインターネットに接続されている IoT デバイス数は、2020 から 2030 年の 10 年間に、151 億台から ほぼ倍の 290 億台になると予想されています。
企業、家庭、オフィスなどの環境はすべて、IoT 技術によるスマート・デバイスの恩恵を受けることができます。スマート・デバイスは、物理的または論理的なセキュリティ・モニターシステム、AI 制御された照明、冷暖房機器などで、今後も我々の想像を超えた様々なデバイスが登場することでしょう。これらのデバイスはすべて、インターネット上のグローバル・アドレスが必要となります。IoT デバイスの大幅な増加が見込まれる中、IPv6 はそれに対応できる唯一の解決方法となります。
米国政府命令と覚書
米国連邦政府および行政管理予算局(OMB: Office of Management and Budget)は、すべての連邦政府機関で使用される新規および既存のネットワークを、2025 会計年度末までに IPv6 対応にすることを義務付けています。この命令には下記のものが含まれます。
- M-22-09: 連邦政府機関は、2024 会計年度末までに全体の 50% のネットワーク(IP 対応)機器を IPv6 のみで運用しなければならない
- M-21-07:[覚書]インターネット技術とサービスを完全に IPv6 に移行する重要性を述べ、課題達成に向けた連邦政府のコミットメントを確認する
米国連邦政府が適切な準備をすることは極めて重要であり、米国内での公共部門へのさらなる展開の規範となると考えられます。米国内の公共部門が高い基準を示すことで多くの分野がこれに追従し、同様の準備態勢の採用が促されるからです。
移行と実装への課題
いうまでもなく IPv6 の実装と使用には利点がありますが、それにはいくつかの課題があります。多くの個人ユーザーや組織は IPv6 の存在や必要性について知識がなく、インターネット・プロトコルのような技術分野にはそれほど関心がありません。ほとんどの人にとってインターネットは、正しく機能しているか、ダウンしていて使えないかのどちらかだからです。個々のユーザーが、既に必須となったインフラを支える技術に関して多くを知る必要はありませんが、IPv4 環境を IPv6 へと移行するには水面下では様々な考慮が必要です。
一例として、IPv6 導入に際して現在のネットワーク利用に影響を与えないことが必要です。これについては「デュアル・スタッキング」というアプローチが使用されます。これはすでに利用している IPv4 ネットワーク上に、IPv6 を展開する方法です。そのネットに接続されている機器は、IPv4 と IPv6 両方のアドレスを持つことで、いずれのプロトコルを使ったホストやデバイスとでも通信ができます。この方法であれば IPv6 へ段階的に移行することが可能となり、既存のネットワークやデバイスの接続に悪影響を与えることなく、導入を完了させられるでしょう。
一方その環境においては、ネット接続された機器は両方の IP アドレスに対応できるよう設定が必要で、時にこれは困難なことがあり得ます。そもそも「デュアル・スタッキング」または IPv6 自体をサポートしないアプリケーションなど、非互換の要素が存在することがあるからです。
Plugable 製品と IPv6
Plugable 社の製品は現時点で IPv6 に対応しており、今後も対応していく予定です。もし今すぐに IPv6 を使用したい環境でも、現在は準備中の環境でも、弊社製品を利用していただけます。下記に、IPv6 に準拠した Plugable 社製ネットワーク関連製品をご紹介します。
ネットワーク機器 (技術仕様は製品名をクリックして表示可能)
製品番号 | ホスト接続タイプ | ネットワーク・スピード | チップセット | 特徴 |
USBC-E2500 | USB-C、USB Type-A |
2.5GBASE-T |
Realtek RTL8156B | |
USBC-TE1000 | USB-C |
1000BASE-T |
Realtek RTL8153 | ドライバ導入不要 |
USBC-E1000 | USB-C |
1000BASE-T |
ASIX AX88179A | |
USB3-HUB3ME | USB-C、USB Type-A |
1000BASE-T |
Realtek RTL8153 |
ドライバ導入不要 USB 3.0 ポート x3 |
USB3-E1000 | USB Type-A |
1000BASE-T |
ASIX AX88179 | |
USB2-E100 | USB Type-A |
100BASE-T |
ASIX AX88779 |
ドッキングステーション(技術仕様は製品名をクリックして表示可能)
製品番号 | ホスト接続タイプ | ネットワーク・スピード | 外部モニタ接続 | 機能 |
TBT4-UDX1 | Thunderbolt 4 / 3、USB4、USB-C |
2.5GBASE-T |
HDMI x1、Thundebolt x2 | |
UD-6950PDZ | Thunderbolt 4 / 3、USB4、USB-C |
1000BASE-T |
HDMI x3 DisplayPort x3 |
外部モニタは組み合わせて 3 台まで接続可 |
UD-ULTC4K | Thunderbolt 4 / 3、USB4、USB-C |
1000BASE-T |
HDMI x3 DisplayPort x3 |
外部モニタは組み合わせて 3 台まで接続可 |
UD-ULTCDL | Thunderbolt 4 / 3、USB4、USB-C |
1000BASE-T |
HDMI x2 DVI-I x1 |
|
UD-3900PDH | USB-C、USB Type-A |
1000BASE-T |
HDMI x3 | PC 充電に非対応 |
結論
IPv6 は、今後インターネットの中心となるプロトコルです。IPv4 からの移行について潜在的な課題や疑問は以前としてありますが、IT プロフェッショナルは IPv6 への移行に備え、所属している組織が IPv6 の提供する利点を活用できるようにする必要があります。IPv6 の導入には明確な利点がありますが、グローバルの完全な移行にはまだいくつかの課題があります。
IT プロフェッショナル、周辺機器メーカー、ネットワークベンダー、政府、および企業が協力することで、これらの課題を克服し、インターネットが誰にとっても信頼性があり安全なリソースであることを確認できます。Plugable 社製品は、今後の IPv6 環境にすでに対応しています。IPv6 を個人またはビジネス上のネットワーク環境に導入したい場合は、ぜひ Plugable 社製品の導入をご検討ください。